シネマ歌舞伎『女殺油地獄』をシニアが観た素朴な感想

2019年11月8日公開

シネマ歌舞伎『女殺油地獄』のシニアおすすめ度

シネマ歌舞伎『女殺油地獄』のあらすじ

油屋を営む河内屋の次男与兵衛は、放蕩三昧で喧嘩沙汰を起こしてばかり。
借金の返済に困り、親からも金を巻き上げようとし、さらに継父・徳兵衛や妹にまで手をあげる始末。見かねた母・おさわが勘当を迫ると自棄を起こして家を飛び出すのだが、借りた金の返済は迫り途方に暮れる。
あてもなく彷徨う与兵衛が向かったのは同業の油屋 豊嶋屋の女房お吉のもとだった。一方、徳兵衛とおさわも、お吉を訪ね、与兵衛を家に帰るよう諭してくれと涙ながらに頼み、銭を預けて帰って行った。このやりとりを物陰で密かに聞いていた与兵衛は、その親心に涙を流し、銭を受け取るが、借金額にはまだ程遠い。
もう親に迷惑はかけられないと思った与兵衛は、お吉に不義になって金を貸してほしいと迫るが、断られてしまう。
金の無心をあきらめ、それならば油を貸してほしいとお吉に頼む与兵衛だったが…。

シネマ歌舞伎『女殺油地獄』をシニアが観た素朴な感想

残念なことだが筆者はシネマ歌舞伎というものを初めて観覧した。舞台をじかに見る方が臨場感があり、絶対いいと信じていた老人の頑固さゆえである。

スポーツ観戦と同列に論じては批判もあるだろうが、舞台上の些細な役者の動きは、競技場での選手の一挙手一投足を画面を通じてみるようによくわかった。「だからどうなんだ」という意見もあるだろうが細部を把握して全体を見ると物語が納得いくこともある。本作が江戸時代の近松門左衛門という作者が描いた物語を題材としていることは知っていたが、スクリーンでまた歌舞伎という日本独特の古典芸能の表現の場としてみるとイメージが異なる。場面の変化ごとに説明があり内容がわかりやすい。

過去に何度か映画にもなっていたと思うが、親子の情愛がよりしみてくるような気がする。また贔屓の役者の顔が大画面でアップされるとファンは堪らないのではないか。

本作は大阪の松竹座での松本幸四郎襲名披露公演をシネマ化したものだが筆者には「目から鱗」だった。

シネマ歌舞伎『女殺油地獄』の出演者

河内屋与兵衛 :松本 幸四郎
七左衛門女房お吉 :市川 猿之助
山本森右衛門 :市川 中車
芸者小菊 :市川 高麗蔵